時計修理受付/納期が長くなるパターン

「分解修理+下記内部パーツの交換」は一ヶ月以上、掛かるのは何故か?
「納期が長くなるパターン」
1.国産ウォッチ意外の回路・コイルなどの交換が生じた場合。
2.「文字盤の足が折れている場合」(エト足付け修理、外注)
3.生産が終了したガラスの交換。 (合う物を人の手で探す)
4.国産ウォッチでも古い時計(10年以上が経過)の回路・コイル・ガラス

何故長くなるかというと。「型番で注文→在庫確認」というものでは無く。
「人が動いて手作業で探す事になります都合、人件費と効率の問題」です。
普通の時計屋さんなら「セイコー・シチズン」とは取引がありますから部品はメーカー発注します。それでも前のページで書いた「納期2週間」です。
雑貨ウォッチ・ブランドウォッチなどは時計屋では取引が無く「メーカー発注は不可」です。つまりは「修理受付不可(お断り)」するしかありません。
それを可能にするにはメーカー以外から部品を調達する必要性があります。

昔は各街には時計の「材料屋」なるものが存在しました。そしてメーカーからパーツの下請けをしている町工場があります。この「材料屋と町工場」の仲買をするのが通称”カバン屋”。
(その昔、パーツを一杯カバンに入れて売り歩いていた名残から)
「時計屋(職人さん)→材料屋に部品の打診→カバン屋に打診→製造工場を当たる」
これが構図ですが今や材料屋が無くなり、カバン屋を必用と出来る職人さんが減っております。

今のご時世、こういった職業は地方では成り立たず。5大都市で無ければ成り立たない様です。地方には「材料屋さえ無くなった現在」職人さんと町工場」をこのカバン屋サンが繋ぎます。需要の数と交通費などの経費から都会から地方へと巡回して仕事集めておりますのが現状。また何故か通信にメールやネットは使わない習慣があります。携帯さえ使いません。それは何故か?

「カバン屋さんは数千円・数百円」のパーツのために動きます。その利益は微々たる物。そのためには”数十円の経費を節約します”。よって一つの依頼のパーツのためには動かず、依頼が溜まってから動きます。よって「納期予定」そんなものは有って無きに等しいのです。持ち込まれたパーツが不良である場合もあり。となると「次回の来店時(一週間ごと)に交換を頼み、次回の来店を待つ」そういう作業をしております。よって都会の時計屋は自身で取りに行ける距離なので若干、納期は早いでしょう。
私はそのカバン屋さんとは面識もありません。でも感じるのは若者がする職業でも無いようで年配者が多いのか?。そう思うのは「商取引のスピード(感覚)が50年くらい前の速度」に私は感じます。(今時、そんな納期を待つ人は居ないぜ!)

私の仕事の基本感覚は「時間の止まった連中とは関わりたく無い」それが本音です。
「納期が遅くなる預かり=お客様が不安になる=クレームの元」なので
利益が出る依頼でも断る。これがベストです。

最近、感じるのはお客様が「修理の経過を随時報告してください」という方が居りますが、とんでもない話し。そんな事、カバン屋さんに言えば人間関係まで崩れます。
私の価値観では3日以上になると不安になります。よって3日以上掛かる仕事は受けたく無いのが本音です。今の職人さんは分解修理でも5〜7日で仕上げてくれます。だからこちらも運転してでも「持込・引き取り」と動いて答えようと出来ます。

例えば40年以上前のセイコークォーツ「QZ」や「QR」または「グランド」や「シルバーウェーブ」などには「G構造」というガラスがあります。(私では脱着さえ出来ませんが)
どれも30年以上は前に生産は終了し調達は不可のパーツです。
どうして職人さんの手に入るのか?。
その昔メーカーから外注を受けていたガラスを扱う町工場とカバン屋さんがやり取りする訳ですが工場ではメーカーの様に「キャリバー番号管理は無し」。製造番号はあってもメーカーのキャリバーとは連結しておりません。こちらがキャリバーを伝えても相手は違う番号で管理し、その対応表が無いという事になるから大変。(その対応表を作って持っている工場もあると聞いた事もありますが)

普通は「大体このサイズで形状厚みで、カットはこの具合」で打診。一応キャリバーは言っても参考データにしかならない様です。結果的には「カバン屋さんが持ち帰って取り付けて持ってくる」って事も普通に行われます。昔のガラスは厚みが違っても装着出来ませんから「ガラスの破片でもあれば厚みを教えて」という事も多々。
探すのに「人間が半径100kmくらいを動いて対応している訳です」数千円の仕事の為にです。信じられないでしょうが。

ムーブメントの注文をしても「キャリバーから、ハイ!これです」なんて世界とは異次元です。私も以前、無理を言って送ってもらった事がありますが「ムーブメントを組み込む前にOHしてね!」って世界で、職人でない私にとっては「使えないムーブを買ったのと同じ」(v_v)

一度収めても若干合わないので再注文すると、都合の付いた時に取りに来て持ち帰って合わせてきます。
「遅くなるので送ります」という習慣が無い様です。(数百円の口銭商売ですから当然ではありますが)。
文字盤の「エト足付け」これも同じで、職人さんから文字盤職人さんに送るという習慣は無く、カバン屋さんが来るのを待ちます。

私から見れば、よくそのスピード感覚で今の時代を生きて行けるな?って世界ですが。時計職人さんが減っている現在、カバン屋さんもいずれ姿を消すでしょう。「カバン屋さんとコンタクトが出来る職人さんさえ希」なのが現状ですか。

「カバン屋さんも時計屋」も「武具・具足屋」と同じ斜陽産業(いえ不要になった産業)ですから仕方がありません。米屋・酒屋・味噌屋が自然淘汰したのと同じです。わたしも「電池交換メンテナンス」が無ければ廃業しかありません。若くないので必死ですが若ければ、転職を考えても時計屋の継続は選択肢に無いでしょう。

兎に角は古い時計の修理のご依頼でパーツ交換が生じた場合は「早い納期・低い予算」では話しにも乗れません。在庫確認さえも出来ません。気長に待って頂くしかありません。経過報告を求められても返答すら出来ません。私らが待つしか無いのが現状です。もうこうなると「断っておくのが無難」と思っているくらいですが、現在の職人さんのスピード感が
素晴らしいのでそれが継続する間は頑張る所存であります。
(私の経験から分解修理の納期が5日以内で仕上げる職人さんは、再修理が殆どありません。言い換えると同じ職人さんでも納期が長くなりだすと再修理が増えて来ます。)
納期の早い職人さんは年輩の方ばかりですが=時計職人としては30年の経験が必用と実感するこの頃ですか。昔から時計職人を目指すのは二十歳まで。30では手遅れと言われるのは職人として旬の時期は「老いとの戦い」になると言う理由からですか。
50歳の私が今からでは到底追いつけない世界でもあります。

「修理受付例」電池交換では不動」 「ベルト修理」 「電池交換」